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⑥どこからがパワハラなのか

2022年6月から中小企業にもパワーハラスメント対策が義務化されました。しかし未だに、「どこからがパワハラなのかよく分からない」という企業様の声をよく聴きます。今回は、そもそも『どこからがパワハラなのか』、そして『なぜパワハラ対策は効果が薄いのか』というテーマで、企業が行うべきパワハラ対策の進め方についてお話してみたいと思います。

現状はどうでしょうか?

改正された労働施策総合推進法(その一部がいわゆる「パワハラ防止法」と呼ばれています。)により、大企業では2020年から職場におけるパワーハラスメントについて、事業主に防止措置を講じることが義務付けられました。マスメディアでもハラスメント問題が取り上げられることが増え、世間ではパワハラはいけない、モラハラはいけないと多く方が認識しているはずなのに、個別労働紛争解決制度施行状況をみますと、ここ1、2年はコロナの影響もあって一時的に解雇の相談も増えてはいますが、労働相談件数で「いじめ・嫌がらせ(ハラスメント問題)」が令和2年度までで9年連続でトップとなっています。

つまり、現状ハラスメントは減っていません。なぜでしょうか。

ハラスメント問題が生じやすい社会的背景

➀経営環境・職場環境の変化
・競争の激化(グローバル化)により、社員のプレッシャーが大きくなっている
・正社員、パート、派遣、上司、取引先、単身赴任、取引先など、多様多様で複雑な人間関係と力関係が混在している
②労働者の変化
・年功序列、終身雇用から成果主義、能力主義への転換に伴い、転職への抵抗感が希薄化、労働市場の流動化、ワークライフバランスを大切にする考え方へ変化
・価値観の多様化や教育のあり方も変化し、またコミュニティの崩壊や、親以外に怒られた事がない、気が合う人としか付き合ってこなかったという世代が増え、ストレス耐性自体が弱まってきている
③ハラスメントに対する社会的認知度の向上
・ハラスメント防止措置義務化(法律化)による認知度のUP
・ハラスメントへの認識の定着、労働者の権利意識の向上、インターネットの普及、マスメディアの報道

このような社会的背景が、ハラスメント問題が生じやすい要因となっていることは、実際に否めません。

パワハラをする人は・・・

前項で述べましたように、確かに昔に比べて労働者の意識が変わった、訴えやすい環境になったというのは間違いありません。それでは労働者がオーバーに訴えているだけなのでしょうか。実際にはパワハラは減ってきているのでしょうか。いいえ、実態はまったくそうではありません。なぜでしょうか。

それは、パワハラを訴えられた加害者とされる方々のお話を聴いてみるとよく解ります。皆さん一様におっしゃいます。「指導の一環だった」、「部下を育てる為だった」、「本人の為だった」、そして何よりも「パワハラ行為なんてした覚えはない」のだそうです。反対に、ハラスメント・ハラスメント(ハラハラ)が問題にされることもあります。少し厳しく注意されただけで、パワハラだ、モラハラだと騒ぎ立てる方です。ご本人に言わせれば、「自分がパワハラと感じればパワハラ」なのだそうです。

そうなのです、何をパワハラだと思うかは、人や立場によって違うのです。パワハラに対する価値観は人それぞれなのです。この、考えてみれば至極当たり前の点に着目しなければ、パワハラ防止などできません。

本人がパワハラと感じればパワハラ?

昨今、『被害者がパワハラだと思ったらパワハラ』、『本人がパワハラだと感じたらパワハラ』とかいう、風説がまことしやかに流布されていますが、そんなことは決してありません。パワハラをものすごく広義に捉え、相手がどう思うかを考えた言動をしていきましょう、といった道徳の話ならまだ分かりますが、少なくとも法令で禁止されている(放置しておくと会社が法令違反になってしまう)職場のパワハラは、きちんと定義が示されており、もっと厳格でシビアなものです。労働基準監督署も裁判所も『本人がどう感じたか』というような、抽象的な根拠でパワハラの有無を判断する訳ではありません。

厚生労働省の職場のパワハラの定義でも、「個人の受け取り方によっては、業務上必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合でも、これらが業務上の適正な範囲で行われている場合には、パワーハラスメントには当たらないものとなる。」(職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告)と示されていますし、業務上適正な範囲と言えるかどうかの一般的な判断基準についても、裁判所は判例で「行為のなされた状況、行為者の意図・目的、行為の態様、侵害された権利・利益の内容・程度、行為者の職務上の地位・権限、両者のそれまでの関係、反復継続性の有無、回数・程度業務内容、行為発生までの経緯等の要素を総合考慮し社会通念上許容される範囲を超えているかどうか」により判断されると明示しています。
 
判例でも、職場のパワハラに当たるかどうかの判断は「平均的な労働者の感じ方」(社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうか、つまり普通の労働者ならば、業務に差し障るほどのパワハラと感じるかどうか)を基準にするとされていますが、難しい定義よりも、要はなぜそのような言動をしたのかの業務上の必要性(理由)を説明できるかどうか、に尽きると思います。同じような問題行動を再び起こさせないために、あるいは業務上もっと適切な行動をとらせるために必要な発言であったと説明ができれば、違法とはならない訳です。もちろん、暴力、人格否定はいけません。
 
つまり、具体的な言動がパワハラの要件に該当するかどうかがか判断されるのであり、本人がどう感じたかというように、抽象的に「パワハラかどうか」が審理される訳ではないということです。パワハラと認定されるということは、裁判所の定義するかなり不適切な行為が実際に行われているということです。大前提としてここをきちんと踏まえておかないと、何かちょっと注意をしただけでも場合によってはパワハラになり得ると誤認されることで、かえって重大なパワハラ問題が矮小化されてしまうことになり兼ねません。

パワハラ対策研修の必要性

厚生労働省発行の『職場のパワーハラスメント対策マニュアル』でも、定期的なパワハラ対策研修の実施が推奨されています。皆さまの会社では、パワハラ防止の研修会はもう実施されましたでしょうか。まだという企業様は、いつ頃行う予定でしょうか。まさか、研修を行わないなんていうことはありませんよね(わざと大げさに驚いてみます)。結論から申し上げれば、研修なしにパワハラ対策・パワハラ防止はあり得ません。

しかしながら、なぜ、何のために研修を行うのでしょうか。皆さま想像してみてください・・・。恐らく皆さまのその想像は、少し間違っています。そうです、「法律で義務化されたことだし、パワハラはやめましょう」と、社員の意識改革を促すために研修を行う…訳ではありません。ハラスメント研修は、道徳の時間ではありません。そもそも、大の大人の性格や考え方、価値観を変えることなど、誰にもできませんし、研修にそんな力はありません。

それでは改めて、何のために研修を行うのでしょうか。パワハラとは、なにか性格の悪い酷い上司が部下をいじめているようなイメージで捉えられがちですが、実はそのような問題上司のケースの方が稀で、実際には「パワハラをしている意識がない」、「自分がパワハラをしているとは思っていない」ケースが殆どです。だから研修を行って、人それぞれに異なっているこの価値観・パワハラの基準(どんな言動を行ったらパワハラとして処分されてしまうのか)を統一化してあげる必要がある訳です。私は研修の目的の8割以上はこれだと思っています。

交通違反の取り締まりを例に

例えば、制限速度の決まっていない道路があったらどうなるでしょうか。小学生が下校中の通学路を、自動車が40キロで通り過ぎていきます。保護者がスピードの出し過ぎで危ないと注意しました。しかし、運転手はこの道幅なら、40キロくらい出しても安全だと反論します。これではトラブルになりますし、制限速度が決まっていないので、どちらが正しい(悪い)とも言えません。
 
しかし、初めから30キロ制限と決まっていれば、40キロ出せばルール違反(違法)ですし、30キロで走っているのに文句を言えばルール違反になります。運転手も保護者も制限速度が30キロであることを知っている。そのあらかじめ決められたルールに違反している、だから悪い、だからやめてね、だから処分するよ、と言える訳です。

研修で何を話すか、何を学ぶのか

パワーハラスメント対策研修レジュメは様々に作成・公開されており、厚生労働省のホームページからも無料でダウンロードできます。どれでも構いませんので、ハラスメント対策のレジュメをよくご覧になってみてください。厚労省や労働法が定める「職場のパワーハラスメントとはこういうことだ」、という具体的行為の内容が、ご丁寧に類型分けまでされて、しっかりと説明してあります。
 
つまり、研修を行って、どんな行為が懲戒処分の対象になるハラスメントなのかを社員の皆さんに周知させる訳です。(実際には研修内容を十分に覚えていなくても、研修で説明したのだから知っているはずだよね、という体裁を整えられれば良い訳です。)「研修会でパワハラとはどういう行為か勉強したよね、あなたはそれをもう知っているよね。それなのにあなたはそれに当てはまる行為をしているよね。それはダメだよ」或いは「パワハラだと言うけれど、研修会で勉強したパワハラには当てはまっていないよね」と言えるようにするための研修なのです。つまり研修の最大の目的は「私はパワハラをした覚えはない」、「自分はパワハラだと感じた」を主観で言わせないようにすることなのです。それぞれの価値観でパワハラかどうかが決まるのではなく、統一したルール(法律・制度・基準・定義)の下で、そのルールを破った場合は処分するよ、という前提ができて初めて、パワーハラスメント対策はスタートすることになります。

「本人がパワハラと感じればパワハラ」という訳ではないことは既に述べました。パワハラは、以下の3つの種類に分けられます。
①「適法」かつ「適切」(本人が過剰に反応しただけ)
②「適法」だが「不適切」(もっと相応しい言い方があった・言い方が乱暴だった等)
「違法」かつ「不適切」(不法行為)
このうち、労働審判や裁判でパワハラとして問題とされるのは、③の「違法」かつ「不適切」な場合のみです。もちろん、②にも気を配ることができれば、職場環境にとってより望ましいことは間違いありませんが、「言い方が乱暴」だとか「性格がきつい」といったことまで、いちいち法律に定めて禁止できるはずがありません。それは企業風土の問題として、長い視点で改善していきましょう。


厚生労働省や労働失策総合推進法が今、「そういった行為をしてはいけません」、「放置すればその企業は法律違反ですよ」と言っているのは、③に該当する行為だけの訳ですから、まずは最優先事項としてその部分に対応していかなければなりません。従って、その会社のご希望や実情にも因りますが、私が依頼を受けてハラスメント対策研修を行う場合にも、パワハラが生じる背景の説明や、思いやりを持って職場環境を良くしていきましょう、パワハラは相手の尊厳を傷つける行為なので止めましょう、というような道徳的な話は程々にして、「どういった行為が、③の「違法」かつ「不適切」なパワハラに当たるのか」という具体的な行為・言動の説明に半分以上の時間をかけるようにしています。これは、かつて研修を行った企業の方々から、研修を行ったはずなのに「結局は何がパワハラに当たるのかよく判らなかった」、「かえってパワハラと言われるのが怖くて業務上の注意・指導ができなくなった」といった意見を多くいただいた反省も踏まえたものです。どんな行為をすると職場のパワハラとして処分されてしまうのか、まずはそれをしっかり理解してもらうことが研修の第一の目的となります。

もちろん研修会を開いてもハラスメントは発生します。しかし発生したら、統一したルールの下で、その都度きちんとした指導・処分(処分と言っても、口頭注意から重いものまでありますが)を行っていくだけです。「いじめはやめよう」、「交通ルールを守りましょう」ではいじめも交通違反もなくなりません。残念ですが、交通違反をすると切符を切られる、罰金をとられる、だから違反しないように気を付ける、現実にはそういうことなのでしょう。つまり、交通違反はいけないことだから守りましょうと意識改革させるのではなく、交通違反をすると罰金とられると意識させることで交通違反の交通違反を減らしていけるのです。それと同じことです。ハラスメントが起こったら放置しないで、その都度きちんと対応し、必要があれば適切な処分を行うことで、「処分されるからハラスメントに該当するような行為を行うのは止めよう」、となることでようやくハラスメントを減らしていけるのではないでしょうか。

 

いかがでしょうか。
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